親や祖父母からの住宅資金の贈与は、一定額まで非課税に

消費税8%の物件は、最大1200万円の贈与税まで非課税

親兄弟も含め、人から財産をもらうと贈与税がかかる。ただし、1年間にもらった財産の合計額が110万円(基礎控除額)以内であれば贈与税はかからない(暦年課税)。また、住宅の購入、新築、増改築等の契約を結び、そのための資金を親や祖父母などからもらう場合、消費税8%の物件なら「最大1200万円」まで、贈与税がゼロになる「住宅取得等資金贈与の非課税」という制度を利用できる。

つまり、「消費税8%」の物件の購入契約や新築・増改築の工事請負契約を結ぶ場合、最大1200万円に110万円の基礎控除額を足した1310万円まで贈与税がゼロになるのだ(一定基準を満たす住宅の場合)。

消費税率・契約時期によって異なる「住宅資金贈与の非課税枠」※1

①消費税が8%の物件の非課税枠
(個人が売り主の中古住宅、土地購入なども同じ)

契約時期※2 非課税枠
2016年1月1日~2020年3月31日 ※2 ・700万円(一般住宅)
・1200万円(一定基準を満たす住宅)※3
2020年4月1日~2021年3月31日 ・500万円(一般住宅)
・1000万円(一定基準を満たす住宅)※3
2021年4月1日~2021年12月31日 ・300万円(一般住宅)
・800万円(一定基準を満たす住宅)※3

②消費税が10%の物件の非課税枠
(2019年4月1日以降)
(新築住宅の購入、住宅の新築や増改築、不動産会社が売り主の中古住宅など)

契約時期 非課税枠
2019年4月1日~2020年3月31日 ・2500万円(一般住宅)
・3000万円(一定基準を満たす住宅)
2020年4月1日~2021年3月31日 ・1000万円(一般住宅)
・1500万円(一定基準を満たす住宅)
2021年4月1日~2021年12月31日 ・700万円(一般住宅)
・1200万円(一定基準を満たす住宅)※3

※1 当制度は2021年12月31日までに、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自分が住むための家屋の新築、取得又は増改築等の費用を取得した場合に適用される。また、「一定基準を満たす住宅」とは、「断熱等性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上」、「耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物」、「高齢者等配慮対策等級3以上」のいずれかを満たす住宅。
※2 2019年3月31日までに契約する物件は、引き渡しが消費税10%増税(2019年10月1日)以降でも税率8%が適用される(仕様などに特別な注文ができる契約の場合)
※3 東日本大震災により滅失した住宅再建等の非課税枠は、1000万円(一般住宅)と1500万円(一定基準を満たす住宅)

「住宅取得等資金贈与の非課税」を受けるための条件

非課税枠の要件は以下のとおり。ここで注意したいのは、「非課税を受けるためには、贈与の翌年の3月15日までに住宅の引き渡しを受け、遅滞なく居住しなくてはならない」点だ(要件の★印)。例えば、建物の完成・引渡時期が2019年の3月15日より先の物件の場合、2018年中に契約し、契約時に支払う手付金を親からもらってしまうと非課税枠を利用できないことがあるのだ。この場合は、引き渡し(残金決済)時に贈与を受けることを検討したい。なお、非課税を受けるためには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日の間に、税務署に贈与税の申告をする必要がある。

■主な要件
★贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、購入、新築、増改築等を行った物件の残金決済・引き渡しを行って、住宅を所有すること
★贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、当住宅に居住すること。または、その後遅滞なく入居することが確実と見込まれること(翌年の年末までに入居しない場合、当制度は適用されず修正申告が必要となる)

・贈与を受けた年の子の合計所得金額が2000万円以下であること
・子の年齢が贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であること
・住宅の床面積(登記簿面積)が50平米以上240平米以下
・中古住宅の場合は以下3つのいずれかを満たすもの

(1)マンションなど耐火建築物は築25年以内、木造などは築20年以内
(2)一定の耐震基準をみたすことが建築士等によって証明された住宅
(3)購入後に耐震改修工事を行い、贈与を受けた年の翌年3月15日までに建築士等によって一定の耐震基準に適合すると証明された住宅

2500万円まで非課税の相続時精算課税も選べる

贈与の翌年の3月15日までに行う贈与税の申告では、暦年課税でなく「相続時精算課税」を選ぶこともできる。これは、60歳以上の父母または祖父母からの贈与について、相続までの贈与額を相続財産に加算し、納めた贈与税を相続税で精算する制度だ。相続時精算課税を選ぶと暦年課税の基礎控除は使えなくなるが、累計の贈与額が2500万円まで贈与税がかからない特別控除額が利用できる。さらに「住宅取得等資金の非課税」も利用できる。例えば消費税8%の住宅の購入等の場合、「2500万円+最大1200万円の非課税枠」となり、贈与額3700万円まで税金がゼロになるのだ(一定基準を満たす住宅の場合)。

ただし2500万円の特別控除額分は相続財産に加算され、相続時に相続税で精算される。また、一度相続時精算課税を選ぶと、その親からの贈与については暦年課税に戻すことができないので注意しよう。

なお、住宅の購入、新築、増改築などのために親から贈与を受ける場合、親の年齢が60歳未満でも相続時精算課税を利用できる特例がある。この特例を受けるための要件は住宅取得等資金贈与の非課税と同じものが多いが、「住宅の床面積(登記簿面積)が50平米以上(上限がない)」「子の収入制限がない」など異なる点もある。